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【感想・批評・レヴュー】映画『リズと青い鳥』☆☆☆☆★「巨匠、山田監督の名刺代わりになるであろう作品」



みなさまおはようございます。ペトロジリウス=ツワッケルマンと申します。






さて、いきなり私事で大変申し訳ないんですけれども。最近、ある映画を鑑賞いたしまして、今回これを少し奥深くまで掘り下げてみようかな、と思い筆をとりました。







その映画の名は、リズと青い鳥


▲『リズと青い鳥』のキービジュアル。












そんな『リズと青い鳥』。なぜこんなに面白いのか。ここからは物語の神髄に切り込みを入れるほどの解説を行っていますのでネタバレエ注意、自己責任でお願いいたします。




















では、取り急ぎ小見出しから羅列します。


・靴トントンは「あはれ」
・オチは叙述トリック
・勘違いしてもいい


この3点を順に解説します。が。長くなりそうなので今日この日は最初の項目だけ述べられれば良いかなと考えております。













・靴トントンは「あはれ」

先日私はこのような記事を書きました。
響け!ユーフォニアムの専門家気取りガイジ登場しておk?






この記事の内容を簡単に言うと「高坂麗奈」という女の子は悔しい時に靴と靴を打ち付ける癖があるに違いない! という感じです。









しかしこの『リズと青い鳥』を見たところ、少し気になる描写が何点かありました。





劇中に「みぞれちゃん」と「青い鳥」に靴をトントンする仕草が見られるのです。

(みぞれちゃんは冒頭希美を待っているとき、青い鳥は草原でリズと一緒になんか食べているとき)








気分がいいときはスキップをする、いらいらしているときは頭をかきむしるように、この靴と靴を打ちつける動作は多くの人がある共通の心理状態に陥った時に行う癖なのでしょうか?









当然ですが、このときのこれら三者の心情はそれぞれ異なることは見て明らかなので、違います。













そこで、この映画、もとより響け!ユーフォニアムシリーズの製作陣は「靴トントンの描写は多用するが、この動作を行う際の心情は登場人物各々によって異なる」と考えているとしたらどうでしょうか。













私は、古文の授業において「『あはれ』という古語は文脈によって様々な意味を持つので訳す時は推して測りなさい」と習いましたが。この映画を読み解く立場である我々は今回の靴トントンも同じような扱いをすれば良いと考えます。








では、今回の映画のお二人にあてはめて考えてみます。






冒頭の「みぞれ」は、のぞみが来るのを一日千秋の思いで待つ気持ち、待ち切れない不安にも似た感情が靴を打ちつけ合うという動作になって出てきた。




「青い鳥」はリズをいっしょにいるのがたまらなく心地いい、そんなご機嫌な気持ちが仕草に表れた。






言いかえれば、「みぞれ」はのぞみを待ち切れない時に靴をトントンする癖がある、「青い鳥」はご機嫌な時にトントンする、ということです。

















古今東西表現者はいままで「靴と靴を打ち付け合う」という符号に一般化がなされるまでの意味をつけられないでいました。




今回メガホンをとった山田監督はこれに目を付け、「あはれ」の意味をつけ活用しようという試みを前面に打ち出してきた、ということです。




彼女がこの所作につけた意味。これが一般化し、「気分がいい時にスキップをする」のと同じくらいの頻度で創作に使用されるようになったら面白いですね。









終わりに

アニメーションという表現媒体に山田監督が残した新たな符号。この符号が今後も氏の作品に登場すれば、また筆をとることになるでしょう。




それではまたお会いしましょう! さようなら!